「食品ロスをなくそう!寄付つき商品販売キャンペーン」取り組み企業の代表者対談
■対談者:株式会社サンプラザ 代表取締役社長 水田芳彦
株式会社三善 代表取締役社長 川合利弘
■対談日時:2022年9月28日(水)
■対談場所:株式会社サンプラザ本社(高知県土佐市)
■同席者:株式会社サンプラザ 商品部部長 長山真也
■対談進行役:ファン度レイジング・マーケティング代表 東森歩
■対談:
東森:いよいよ食品ロス削減とフードバンク活動支援につなげる寄付つき商品販売キャンペーンが10月1日
からスタートします。今日はこの取り組みを推進する株式会社サンプラザと株式会社三善それぞれの
社長にお越しいただきまして、取り組みの意義などをお聞きします。
まずは、それぞれの店舗の特徴を紹介してください。
水田:株式会社サンプラザは高知県土佐市に本社があり、高知県内でスーパーマーケットのサンプラザを
6店舗、業務用食品スーパーを5店舗、移動スーパーのハッピライナー事業、そしてホームセンター
を2店舗、飲食店を2店舗、ファミリーマートをフランチャイズで運営しています。弊社は「地域密着」
を掲げて、地域の皆さまと様々な連携をしています。
川合:はい。株式会社三善は静岡県掛川市におきましてFOOD MARKET SANZENというスーパー
マーケットを1店舗、移動スーパー事業で3台の車両を稼働、パン屋1店舗で運営しております。
創業は明治時代、三河屋善衛門が糸屋「三善」を開業したところから事業が始まり、昭和42年に
スーパーマーケット業に変更、現在創業130周年を迎えます。3年ほど前から「地域密着」を推進
していまして、地元掛川を中心にファンづくりに取り組んでいます。
東森:両社とも「地域密着スーパーマーケット」の推進を図っていますね。
水田:おかげさまで今年創業60周年を迎えることができました。移動スーパーのハッピライナー事業を
今から40年ほど前に始めるなど、地域の課題と向き合って、地域と共に歩んできました。最近では
小学生向けのおしごと体験、高知商業高校社会マネジメント科地域実践コースの生徒の皆さんと地元
食材を取り入れた惣菜商品開発などを取り組んでいます。地域のためにできることを実践しながら、
この後の70周年、100周年と大きな節目を目指していきたいと考えています。
川合:弊社も高校生との商品開発に取り組んでいます。地元の掛川西高校食物研究部の皆さんと取り組む
商品開発では、掛川市や静岡県産の食材を活用した惣菜商品や加工食品を開発しています。惣菜商品
の全国コンテスト「お弁当・お惣菜大賞」におきまして、2020年と2021年の2年連続で全国一位と
なる最優秀賞を受賞しました。また、加工食品では地元の無農薬レモンを使った「掛川檸檬饅頭」
が今年の5月に発売を迎えました。
東森:なるほど。地元の食材を活用した商品開発が盛り上がっているようですね。これまでにどんな商品が
誕生したのでしょうか?
水田:高知商業高校との共同開発商品で言いますと、2017年の「土佐の食1グランプリ」で優勝しました
ゆず風味の唐揚げ「ゆずから」や、2018年の「お弁当・お惣菜大賞」のおにぎり部門で最優秀賞に
輝いた「土佐の結び」、そして今年2022年は「お弁当・お惣菜大賞」のタイ・ベトナム料理部門で
最優秀賞となった「土佐ガパオ」に続いています。「ゆずから」や「土佐ガパオ」は人気商品として
支持を集めています。
川合:三善では「掛川檸檬饅頭」は掛川西高校との共同開発に取り組み始めて以降、初となる加工食品として
の開発と発売を実現しました。これは掛川市外での販売も視野に入れていまして、道の駅や空港は
もちろん、首都圏での販売も想定しています。
また、同高校と取り組む地元食材を活用した惣菜商品開発では2020年、2021年と「お弁当・お惣菜
大賞」におきまして丼部門2年連続最優秀賞を獲得することができました。
東森:両社とも素晴らしい成果につなげていますね。時代の中心を次の世代として担う高校生が、スーパー
マーケットとの取り組みで地元への理解を深め、大人と一緒に商品開発という課題に取り組むことで
お互いに刺激をし合うこの取り組みは、地域経済の活性化や若者の定住移住などにも効果を発揮する
ことが期待できそうです。
東森:そして、地域の社会的課題を解決することに貢献する「寄付つき商品販売」を始めた理由をお聞かせ
ください。
水田:サンプラザはこの「寄付つき商品販売企画」を始めて4年目になります。私たちの地元に貢献できる
企画として取り組んでいます。1年目は地域福祉、若者の移住定住促進、市民の健康増進、観光の
活性化をテーマとして寄付先団体を選定しました。2年目はそこに仁淀川と鏡川の自然環境保護活動
を加えました。3年目には農林水産省の協力を得て、「食品ロス削減とフードバンク活動支援」という
新しいテーマに基づいて実施しました。きっかけは農林水産省から商品部部長の長山部長に直接連絡
があり、打ち合わせを経て企画実施に至りました。今年は7月に仁淀川清流保全、秋は食品ロスと
フードバンク活動支援、という年間2回の寄付つき商品販売企画を実施しています。
長山:農林水産省から直接連絡が入るなんて予想もしていませんでしたので、最初は驚きました。その前の
2年間で寄付つき商品販売企画に取り組んでいましたので、食品ロス削減とフードバンク活動支援と
いうテーマを寄付つき商品販売に絡めることはすぐに理解できました。
川合:三善では3年前から実施しています。スーパーマーケット業を営む上で地元との関係は欠かすことが
できません。そこで地元の生活課題を解決するための応援ができる手段として寄付つき商品販売企画
に取り組んでみることにしました。1年目は地域福祉向上として、フードバンク活動支援と障がいの
ある方の就労支援をテーマとしました。2年目はフードバンク活動と中学校の部活動支援で寄付先を
設定。3年目となる今年は食品ロス削減とフードバンク活動支援を設定し、寄付先は掛川のフード
バンク活動支援としました。今回は三善とサンプラザの両社の寄付つき商品販売企画のアドバイザー
を務める東森さんの紹介により高知のサンプラザと一緒に取り組むという初めての試みが実現しま
した。地域密着スーパーマーケットができる地元貢献企画として全国に広がって欲しいと思っています。
東森:今、お二人から「食品ロス削減」という言葉が出ましたが、このテーマに取り組むことの意義には
どんなことがあるのでしょうか?
水田:日本国内での食品ロスは年間およそ650万トンあると言われています。まだ食べることができるのに
捨てられている食品がかなりの量であることがこの数字から分かります。また、経済的に困っている
方も多くなっていますので、その方を支援することを社会に伝えるために、食品ロスを減らしてその
分食べることができる食品を届けたい、という願いを込めています。社内的には売れる数と製造
する数を限りなく近づけて、廃棄してしまう食品を少なくしたい、と考えています。
川合:スーパーマーケットでは賞味期限が過ぎてしまって廃棄をしなければならない食品がどうしても発生
してしまいます。すぐ食べるなら手前から取って買ってください、を1社で呼びかけてもなかなか
効果が出てこないようにも感じています。今回は農林水産省や高知のサンプラザとの共同実施という
ことで、注目度が高まり、食品ロス削減の効果が高まることを期待しています。
東森:なるほど。お店で発生してしまう食品ロスを減らすことにつなげるために、フードバンク活動の
支援について消費者に関心を持ってもらったり、行政機関との連携を図ってより多くの消費者に
情報が届くようにする等、この企画を実施するにあたっての目的を明確に持っているんですね。
東森:もう一つのキーワード「フードバンク」についてはどんな印象をお持ちでしょうか?
水田:初めて聞いた時にパッと浮かんだのは「こども食堂」でした。その後、高知西高校の生徒さんから
「フードドライブボックスを設置する協力をして欲しい」と相談があり、今年に3月に鴨部店で
弊社として初めての設置をしてみました。そういった中で、食事をすることに困っている方を支援
する活動としてフードバンクへの理解を深めていきました。
川合:過去2年間で実施した寄付つき商品販売キャンペーンの際に、掛川市社会福祉協議会に食支援の
現状についてヒアリングをさせていただきました。多くの方が困っていること、その困っている方
を支援するための仕組みとしてフードバンクが存在していることを認識し、役に立ちたいと思いました。
東森:そこで寄付つき商品販売企画とフードバンク活動支援が繋がってくるわけですね。寄付つき商品販売
企画は誰でも参加できる社会貢献の仕組みですので、そこに食支援のテーマを盛り込むことで多くの
消費者がその課題の存在を認識することになります。
水田:その通りです。サンプラザはそういった課題に向き合うことで、お店と地域はつながっているんだ、
という認識を社内外に広げていきたいと考えています。今年は取引先の皆さんにも説明会を実施し、
社会的課題の理解とこの企画への協力をお願いしたところです。
川合:地域密着と言いながら、社会的課題について具体的に行動しないと意味がない、と私は考えています。
この寄付つき商品販売企画は地域の役に立っている、という実感があります。また、私自身や社内の
スタッフの皆さんも地域の課題を認識し、それに関わっていくという姿勢に変化させる良いチャンス
だと思っています。
東森:こういった社会的課題の解決に貢献する取り組みを実践する両社ですが、これからの時代に求められる
スーパーマーケットはどんな姿なのでしょうか?
水田:地域の命綱、ライフラインとしての存在であると考えます。これは新型コロナウィルス感染症の
影響を受けたこの2年間でより強く感じました。食品をお客様に確実に供給するための仲介役として
の実店舗の存在意義は重要です。また、移動スーパーも食品を必要な方の下に届ける、という使命を
改めて認識しました。これから先も地域の皆様のより豊かで健康的な生活の実現に貢献できるお店で
あり続けられるよう、努力をしていきます。
川合:三善はライフラインとしての役割を果たします。地域の食生活を担っていることがお店で働く
スタッフの皆さんのモチベーションにもつながっています。同じく食品を届ける移動スーパー事業
はその運営に苦労することも多いですが、私たちが訪問することを待ってくれている方のことを
想うとやり甲斐を感じています。移動スーパーの現場では「買って下さってありがとうございます」
という感謝の言葉に対して、「ここまで持ってきてくれてありがとう」とお客様から感謝される言葉
をよく聞きます。その言葉を励みにこの先もライフラインとして三善は地域に貢献し続けます。
東森:力強いメッセージをありがとうございました。
今日の対談はここまでです。スーパーマーケットの社長の考えを消費者の方に伝える機会はなかなか
ありませんので、今回の対談の内容を発信できることに大きな意義があると思います。
本日はありがとうございました。
<会社情報>
■サンプラザ(高知県土佐市)
株式会社サンプラザが運営する食品スーパーマーケット。本社は高知県土佐市にあり、高知市や南国市など
高知県内に11店舗のスーパーマーケットを展開する。地元の食材や加工品を仕入れる地域密着戦略を実践。
高知市立高知商業高校社会マネジメント科地域実践コースとの共同開発は5年目を迎え、これまでに開発
した惣菜商品は「お弁当・お惣菜大賞」において最優秀賞を2度受賞している。「これからも地元・高知を
応援!アイ・ラブ・コウチ」」をキャッチコピーとして、高知の活性化に貢献するスーパーマーケットとして
存在感を放っている。
■FOOD MARKET SANZEN(静岡県掛川市)
株式会社三善が運営する食品スーパーマーケット。品質にこだわった商品や地元の食材を積極的に仕入れる
個性派スーパー。餃子やスパイスミックス、クラフトビールなど自社ブランドの商品開発に力を入れて
いるほか、鮮魚コーナーで毎週火曜日に展開する「寿司バイキング」はテレビの情報番組で紹介されるなど
大人気企画となっている。県立掛川西高校食物研究部との共同開発で誕生する惣菜商品は「お弁当・お惣菜
大賞」で最優秀賞を2年連続で受賞するなど成果を発揮。掛川で個性を放つお店として注目を集めている。
ホームページ→ http://s-sanzen.com/
※「お弁当・お惣菜大賞」とは・・
スーパーマーケットやコンビニエンスストア、専門店などで販売されている商品の中から食の専門家
で構成された審査員により特に優れた商品を選出し表彰するプログラム。毎年9月にエントリーを
おこない、翌年2月に表彰を行う。一般社団法人全国スーパーマーケット協会が主催する事業。